経済成長戦略としてのカジノについて再考する

   2014/12/22

カジノは本当に「経済成長戦略の目玉」なのか

カジノイメージ

衆院選でもカジノは注目の的

安倍首相により、「経済成長戦略の目玉」と位置づけられたカジノを含む統合型リゾート(IR)だが、IR議連(カジノ議連)により提出されたIR推進法案(通称:カジノ法案 正称:特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案)は衆院解散とともに一旦廃案となった。

だが、カジノ議連は2015年度通常国会での成立を目指し、再度法案を提出し、審議を求めるとしている。

そして、自民党や維新の党は総選挙向け公約にカジノ合法化推進を明記し、カジノ推進を強く掲げている。

一方共産党は「百害あって一利なし」とギャンブル依存症患者増加・治安悪化などへの懸念を根拠に強い反対の姿勢を見せており、一触即発の状態だ。

 

カジノ熱はまだまだ冷めない

日本カジノ合法化について語られる際に、必ずと言っていいほど聞く名前がある。

シンガポールの「マリーナベイ・サンズ」だ。

シンガポール都心部の湾岸エリアに位置し、ランドマークとしてそびえたっている。

屋上には天空のプールが広がり、2500を超える客室数の巨大ホテル、ブランドショップやレストランが並ぶショッピングモール、世界的有名ミュージカル観劇ができる劇場、45000人収容可能な会議場、そしてカジノとまさに日本が目指す統合型リゾート(IR)の形だ。

維新の党は実際に、「シンガポール型の統合リゾート(IR)を実現するための法制度を整備する」と総選挙公約に明記しているほどだ。

さらに2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催が決定しており、それにあわせてIRを開業することができれば、日本経済に大きなインパクトをもたらす可能性が高いので、カジノ熱の再燃はほぼ確実と言える。

そもそも日本でカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に対する機運が高まったのは、「観光立国」を目指す政府の方針と、2020年の東京五輪開催決定であるので、現状カジノ熱が冷める理由がないのである。

政府の目標としては、2020年までに訪日外国人数を現在の2倍の2000万人まで増やすとしていて、開催が決定している東京五輪と、さらなる起爆剤としてカジノ・IR誘致を目論んでいるのだ。

 

カジノビジネスは3つに分類される

「カジノビジネス」とひとくくりに言っても、各国でその目的は異なる。その目的に応じて大きく次の3つに分類される。

「外貨獲得型」・「国内エンターテインメント型」・「地域振興型」

外貨獲得型の例としてあげられるのは、世界最大級のカジノ市場を有するマカオだ。

カジノを基幹産業と位置付け、文字通り外国人観光客から外貨を獲得することを主目的としている。

国内エンターテインメント型の例として挙げられるドイツやイギリスは、自国民の余暇需要に対する供給、つまり自国民に対するエンターテインメントの提供を目的としている。

IR先進国として世界から注目を集めているシンガポール、そして日本も目指しているのが地域振興型だ。

これが意味するところは、カジノ単体での収益化ではなく、上述「マリーナベイ・サンズ」で説明したような、ホテル・ショッピングモール・各種エンターテインメント施設・MICEなどを併設し、多くの観光客・ビジネスを呼び込み、地域経済への寄与を目指すものである。

 

「地域振興型」シンガポールカジノが成功した理由とは

近年のカジノ・IR分野において、シンガポールは成功事例に一つとされている。今後どうなるかはもちろんわからないが、少なくとも現状としては成功と言わざるを得ないほどの結果をだしているのだ。

だが、そのシンガポールもかつては現在の日本同様、賭博は法律で禁じられていた。1980年代よりカジノ合法化の機運は高まりを見せていたが、根強い反対意見もあり、一歩踏み出せずにいた。しかし2004年にリー・シェンロン首相が就任しカジノ合法化に向けて急旋回をしたことで、2005年にはそれが実現した。

当時のシンガポールは1980年代に有したアジア観光市場での圧倒的存在感を、アジアの都市間競争の激化を背景として失いつつあり、観光産業の国際競争力低下への危機感を募らせていたことから、カジノ解禁へと踏み切ったという事情もある。

2010年には「リゾートワールド・セントーサ」「マリーナベイ・サンズ」2つの巨大統合型リゾート施設を開設し、前者をユニバーサルスタジオを併設するファミリー向け、後者をMICEに重きを置いたビジネス・コンベンションゲスト向けとしてそれぞれ差別化し、開業・運営した。

この2施設はシンガポール観光産業に大きな影響をもたらし、2009年から2013年にかけて外国人観光客数6割増・観光収入5割強増という目を見張る結果を出した。

さらに驚くべきは、観光収入全体の約20%をカジノを含む観光・娯楽からの収入が占めているという事実だ。

また、シンガポールではIRにおける総収入の7~8割をカジノ事業収入が占めており、このカジノが稼ぎ出す膨大な収益のおかげで、IR内のその他相対的に収益性の低い施設への投資を可能とし、IR全体を集客力の高い魅力的な施設へと作り上げることを可能にしている。

これだけ聞くと、「IRって言っても結局カジノだけじゃないか」と言われてしまいそうだが、IR内でのカジノが占める施設面積の割合は数%であり、決してカジノ色が強い施設になっているわけではないのである。

つまりシンガポール型カジノ成功の要因は、「明確なターゲティング」「集客力を持たせた魅力的な施設運営」「カジノ事業の巨大収益」なのである。

 

カジノを含むIRの経済効果は4兆円!?

IR推進法案成立に向けた政治的動向に並行する形で、地方自治体やカジノ関連企業の動きも勢いが出てきている。

地方自治体としては、東京(お台場)・大阪(夢洲)・横浜(山下埠頭)・沖縄(恩納通信所跡)等をはじめとして、全国各地でIR誘致を目指し名乗りを上げている。

民間企業の動きとしては、サンズやMCEなど大手海外カジノオペレーターが日本進出に意欲を見せているほか、日本企業でもセガサミーが韓国で本格的にカジノ事業に参入し、運営のノウハウを得ようと積極的に活動をするなどの動きを見せている。

実際にIR推進法案が成立した場合には、カジノ関連企業だけでなく建設・不動産・ゲーミング機器製造・ホテル・飲食・旅行・その他エンターテインメント関連企業など様々な分野からの参入が見込まれる。

ここまで聞いただけでも、巨大な市場になることは容易に想像できるだろうが、ここからは仮定をもとに少し具体的な数字を使って検証を進める。

ここでは仮に東京にカジノを含む統合型リゾート(IR)が建設されたと仮定する。

経済効果としては、「開業前(建設期間)」「開業後(運営開始)」に大きく分けて考える。

開業前、建設投資額については、現在多くの地域ですでにカジノが存在していることから、新たな魅力や一定の質・量が必要になると想定されるので、投資規模は少なくともシンガポールと同等ではあると予想される。

つまり、土地取得費を除いても8000億円規模になるという結論が得られる。

次に開業後、カジノ運営による経済波及効果については、カジノに対して日本人がアメリカ人と同様の行動パターンを取るという前提で地域別のカジノ潜在市場規模から試算すると、関東地区で1兆0665億~2兆8648億円・近畿地区で2903億~3658億円の経済効果(付加価値)が生じると見込まれている。

それぞれの結果を合算することで、2~4兆円程度、ないしは外国人観光客の予想を上回る増加でさらなる経済効果が生まれる可能性もあるということになる。

 

カジノ誘致によるマイナス面の検証と対策が不可欠

ここまでは、カジノ誘致によるプラスの側面を中心に紹介してきたが、もちろんマイナスの面もある。

例として、ギャンブル依存症患者増加・青少年への悪影響・治安悪化などだ。

実情として、ある新聞社が実施した世論調査ではカジノ合法化に対して6割が「反対」だという結果も出ている。

また、国民だけでなく政治家のなかでも意見が割れている状況であることを考えると、マイナス面の検証とそれに対する施策は必要不可欠であることは間違いない。

例として、シンガポールでは自国民に対して、8000円程度の入場料を課すことや、失業者・生活保護受給者の入場を禁止することで、ギャンブル依存症患者増加を抑制している。

さらに、カジノの売上から徴収した税収増加分をギャンブル依存症対策費として利用し、対策組織作りやカウンセリングサービスを提供している。

その結果、シンガポールではカジノ解禁前後でギャンブル依存症患者数に大きな変化はなかったとの報告もある。

 

日本カジノ情報(JCI)のコメント

本記事に関わらず、私自身も何度も述べているが、カジノ解禁はプラスの面しかもたないわけではない。

ただ、「リスクのないリターンはない」こともまた間違いなく、そのちょうど良いバランスのところで政策を進めていっていただきたいと切に願う。

あくまでも私は賛成派だが、ぜひ反対派の方と感情的ではなく、論理的な議論をさせていただきたいと考えている。

【告知】

日本カジノ情報の「tsu」アカウントを作りました!

こちらでも交流をさせていただければ嬉しいです!

「tsu」についての説明はこちら

「tsu」無料会員登録はこちら

記事ページにコメント欄がありますので皆様からもばしばし意見をよせていただきたいです↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

この記事へのコメントはこちら

内容に問題なければ、下記の「コメント送信」ボタンを押してください。